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Chapter. 1
Encounter Season

出逢いの季節 03





 
   

そんなこんなで親父が帰ってくる前に食事を済ませ、構って欲しそうな瑞穂を適当にあしらって自分の部屋へ退散する。
明後日はいよいよ高校の入学式。
ベッドの上に置いていた制服を目にすると、気分がどんよりと沈んでいく。

……スカート。
それもセーラー服。
転校先の中学は私服登校(だからそこを選んだ)だったのでスカートを穿かずに済んだんだけど。

カウンセラーの先生が言ってたんだけど、こういったものは慣れるのが一番だそうだ。
日頃から身につけていれば、すぐに気にならなくなるそうなんだけど。
そうは言っても精神面の抵抗が強くて、一度だけ穿いたことはあるものの、それ以来スカートだけは避けてきた。
本当に慣れてしまえるものなのか信じ難いし、その自信もない。
でも……学校は基本的に制服着用だし、ここであれこれと思案してても仕方ないので、とりあえず試着してみようかな。




一度は決心して制服を手にしたんだけど、試着に対する葛藤が頭の中で渦巻いて思考が停止する。
制服を見つめて、ぼぉ〜っと立ちつくしていると、静かにドアをノックする音が聞こえてきた。

「お兄ちゃん……ちょっといい?」
ドアの向こうから瑞穂の声が聞こえてくる。

「どうぞ」
と言うが早いか、俺の返事とほぼ同時に瑞穂が部屋に入ってきた。
そして、手にしていた制服を目ざとく見つけると、はしゃいだ声を出す。

「あ。高校の制服だぁ。光綾のは、ちょっちアナクロなセーラーだったね。でも、可愛くて結構男女ともに人気あるんだよ〜」
なんだか、すごく嬉しそうな瑞穂を前に、俺はなにも言えずにまぶたを閉じる。
無意識にこめかみがヒクヒクと震えた。

「あれ?お兄ちゃん。なんか機嫌悪そうだね」
そんな俺の変化を見て取ったのか、瑞穂が俺の顔を覗き込んでくる。

「当たり前だ! セーラー服なんて着られるか!!」
「え〜? なんで〜? 似合うよーきっと」
その似合うってのも問題なんだ。
まだ、男として育ってきた自覚と言うかプライドからか、スカートを穿くこと自体に抵抗を感じる。
前に一度だけ穿いた時は股下が落ちつかないやら、女装してるみたいだわで、それ以来穿かなくなった。

「ね。ね。着て見せてよ」
「な!?」
「予行練習だと思って。ね? そうそう着方わかる? 瑞穂が教えてあげるよ」
妙に……いや、かなり嬉しそうにして瑞穂が俺にセーラー服を着せようと、目をキラキラと輝かせている。
一瞬断ろうかと思ったけど、明後日には着て行かなきゃならないんだし、現在かなり決心は鈍っていたけど元より試着してみるつもりだったので渋々了承した。
意を決すると、パパッと今着てるセーターとジーンズを脱ぐ。

「あ……わ……」
瑞穂が持ってたセーラー服に顔を埋めて、それでも顔を真っ赤にしながらこっちを見ている。

「?」
「お姉ちゃん……胸おっきいね」
そう言われて、マジマジと自分の胸を見下ろす。
確か中三になってから急に成長しだしたんだよな。
今ではもうなんともないけど、膨らみ始めた時は疼くように鈍い痛みが胸全体を覆っていて、四六時中意識が胸にいくし、触ると痛いしで正直パニックだった。
医者の話では女性ホルモンが分泌され始めて、正常な発育が始まっただけだから心配するなとか言ってたな。

「んー。まぁな。瑞穂も、そのうち大きくなるよ」
なんの根拠もないけど、とりあえずそう口に出してみる。
瑞穂は確かまだまだ小振りかもしれない。
と言っても実際に生で見たことはないんだけど。

「ねぇねぇ、やっぱり揉むとおっきくなるの?」
興味津々、好奇心に爛々と目を輝かせて瑞穂が詰め寄るようにして訊ねてくる。
いったいなにを言い出すかな、この娘は……。

「……友達に遊び半分で揉まれたりしたことはあったけど、それは原因じゃないと思う。去年くらいからかな急に大きくなり始めたのは」
「えぇ!? ねぇ、お姉ちゃん。その友達って男の人?」
「バカ。んなことあるわけないだろ。女の子だよ」
親友にして悪友の月城薙の顔が思い浮かぶ。

「ほぇ〜。それじゃ瑞穂もお姉ちゃんみたく、これからおっきくなるのかな?」
そう言って自分の胸に両手をあてる。

「そうなんじゃないの?」
それにしてもコイツ、下着姿だとちゃんとお姉ちゃんと呼ぶのな。

「さぁ、早く制服よこしな。風邪ひいちまう」
「あ。ごめんね。ハイ」
渡された制服のスカートをつまみ上げ、足を通してホックを留める。
ちょっとウエストブカブカかな?

「あ。それはね。ここで大まかに調節するんだよ。あとの微調整は、ここに金具が並んでるでしょ。これでやるんだよ」
瑞穂が調節してくれてる間に、シャツのボタンを留めて上着の袖を通す。

「リボンは普通に結べばいいよ。っと。これでよし」
着付け(?)が終わって、姿鏡の前で前後ろとクルクル回ってみる。

「ほらほら。お姉ちゃんすっごい良く似合ってるよ」
「……」
確か似合ってた。
悲しいほどに……。
セーラー服が似合う自分になんだか泣きたくなったが瑞穂の手前我慢した。
コイツにはこの気持ち、絶対わかんないだろうな。

「スカート、ちょっと短くないか?」
膝上十センチほどのスカート丈が心許ない。

「今は、これくらい普通だよ」
「そうなのか?」
パンツ見えるんじゃないのか? これは。

「うん。でもお姉ちゃん、足綺麗だからいいじゃない」
「いや、そんなことを問題にしてるんじゃなくて」
「気になるんならストッキングしたらどうかな? 確か学校指定のものがあると思うんだけど」

「う〜ん。そうだなぁ……ないよりは安心するかもな」
「お母さんが新しいのいくつか持ってたと思うからあとで聞いてみたら?」
「ああ」
「そうだ! ねぇねぇ。お母さんにも見せてあげようよ」
「いぃ!?」
「ほらほら。早く早く!」
「ちょっ、ちょっと待て……」
瑞穂はこちらの返事も待たずに引っ張って行く。




「お母さ〜ん。ほら、お姉ちゃんの制服姿だよ〜」
キッチンに入ると、親父が帰ってきてて背広姿のまま水を飲んでいた。
俺の制服姿を見て、コップを口につけたまま時間が止まったように動かなくなる。

「まぁまぁ。さくらちゃん! 良く似合ってるわよぉ」
「……ぁぅ」
母さんが手放しで誉めちぎるせいで、女装を見咎められたような気恥ずかしさから顔が赤くなっていく。

「そうやって、頬を赤く染めてるところなんて、すっごく可愛いわぁ」
母さんがエプロンの裾を両手でギュッと握って、心底そう思ってるような仕草で遠慮のない感想を述べる。

「うんうん。やっぱお姉ちゃん可愛いよ〜」
「ふむふむ。これはボーイフレンドの四、五人はすぐに出来るわね〜」
「ねぇお姉ちゃん。中学の時にラブレターとかもらってたの?」
「そうねぇ、さくらちゃんならすでに引く手数多かな?」

おもちゃとなっている俺を尻目に、親父はひとりキッチンから出て行った。
ふぅ……。その後ろ姿を見送りながら小さく溜め息をつく。帰ってきてるって知ってたら、こんな姿で下りてこなかったんだけどな。
息子の情けない姿を見て呆れちゃったかな。
制服の話題で盛り上がる母娘を残し、ソッコーで部屋へ戻って着替えた。
今日はもう風呂に入って寝よ。とほほ……。

 
   






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