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Chapter. 8

The Cherry Orchard
さくらの園 8





 
   

「ただいまー」
「今、戻りました。ごめんね真秀ちゃん、任せっきりで」
美術室に顔を出したあと、ようやく生徒会室に戻れたのは午後六時を少し過ぎてからだった。

「お疲れさま、ミキちゃん、カエちゃん。応援合戦の練習は終わったの?」
パソコンに向かっていたコノエが振り向いて労いの言葉をかけてくれた。

聖さんはコノエの話を邪魔しないよう視線だけあわせて会釈する。
今は当日配布するプログラムの最終確認をしているようだ。




生徒会室は四階建ての特別教室棟の三階にある。

一般教室と同じ造りなので、室内の広さもまったく一緒だ。
教室と同じと言うことは三十名分の机がおける広さがある。
でも、半分は資料を保管する書庫なので、役員が四人しかいない割に広くは感じない。資料の他にもホワイトボードや資材が多く、十名も集まればいっぱいになるだろう。

ドアから見て、手前から聖さんと楓ちゃんの席が並び、そのふたりとL字になってコノエと俺の席がある。俺とコノエは窓を背にして、ドアから入ってきた来訪者と向き合えるようにしてある。

主な備品としてはパソコンが三台。
楓ちゃんは書記の記録に、聖さんは会計の計算にそれぞれ使用するから、残った一台をふたりで使うことにしている。
ただ、例のメールシステムを集中管理していることもあって、ほぼコノエ専用になっているけどね。

他のめぼしい設備は、エアコンと電気ポットくらいかな。
さすがにガス水道までは望むべくもないけど、『冷蔵庫くらい欲しいよね〜』とはコノエの弁。
かなりの時間をここで過ごすことになるので、その意見には俺も賛成だ。
しかし、冷蔵庫なんてそうそう調達できないし、新しく買うお金もないので残念ながら保留になっている。

無いものについて思い悩むより、当面はエアコンで快適に過ごせることを喜ぶべきだろう。隣が図書館という立地条件から試験勉強にも便利そうだ。




「明日の通し稽古で仕上げかな。結構アドリブになりそうだけどね。……紅茶淹れるけど、どうかな?」
汗をかいたので喉が渇いた。そして、お腹も空いてる。
みんなが一様に頷くのを確認して食器棚を開けた。

「あ。さくらちゃん、私も手伝うね」
そう言って、楓ちゃんが電気ポットのお湯を確認してくれる。

「ありがと。足りなかったら水をいっぱいまで入れて沸かしておいて」
「水は勢いよく。だよね」
「うん。お願い」
お湯が沸く間に、ティーカップとティーポットを準備しておこう。

カップやポットなどの小物はコノエが持ってきた私物で、日本茶、麦茶、紅茶、コーヒーなどは接待用に生徒会費で揃えていた。まぁ、ほとんど自分たちで消費することになるんだけどね。ほかに、お茶菓子は各自が持ち寄ることになっていて、今日はコノエが持ってきたバームクーヘンがあったはず……あったあった。

「コノエ〜。バームクーヘン貰っていい?」
「いいよ〜お腹空いてるんでしょ? なんなら全部食べちゃって」
コノエの言葉に、見透かされたようで気恥ずかしくなる。

「悪いね。でも、みんなで分けようか」
「いいのよ気にしなくて。私たちはさっきいただいたの。だからそれはミキちゃんの分なのよ?」
「そう? ならありがたくいただきます」
助かった。行儀が悪いけど立ったまま、さっそくひと口ほおばって幸せを噛みしめる。

はぁ……。少し落ち着いたかな。

「それで、さっきも話してたんだけどね。ミキちゃんが淹れる紅茶って、なにか違うのよね〜」
「違うってなにが?」
振り向くと、コノエがカタカタとキーボードを叩きながら顔だけこちらに向けている。
……ブラインドタッチなんだろうけど、画面も見ずに器用なことだ。

「確かに、同じ葉を使って自分で淹れたものと比べて飲みやすいです」
そう言うと作業の手をとめてしばし思案する聖さん。

「そうかなぁ。特別、変わったことはしてないけどね」
「ならあれね。きっと、ミキちゃんの愛情が入ってる分、美味しいのよね〜」
ウインクするコノエに苦笑いで答える。

「そんなので美味しくなるのなら、いくらでも入れるんだけどね」
でも愛情を感じるってのは、俺じゃなくて飲み手の意識の問題じゃないのかな?

「でもでも、さくらちゃんの淹れ方見てると本格的だなって思うよ。お湯をいっぱい沸かすのもポットを暖めるためなんだよね」
楓ちゃんは少し感動してるみたいだ。
ちょっとだけ熱が入った視線を受け、照れを感じつつも頷き返す。

「紅茶は高温で抽出した方が香りが強くなるからね」
「そこをしっかり実行するミキちゃんが偉いのよ。理屈ではわかっているんだけど、自分で作ると、つい手間を省きたくなるもの」
「確かに自分が飲むだけなら手間をかけずに淹れることもあるよ。でも、せっかくなら美味しく飲みたいし」
「実はさっき、会長がいない間に櫻子……副会長と一緒に紅茶を淹れてみたんです。ちゃんとポットも暖めたのに、昨日淹れてもらったものと比べると雲泥の差がありました」
手元のカップに視線を落とす聖さん。

あぁ、だからポットが少し暖かいのか。

「と言うわけで〜。出来る範囲で構わないから、今後はミキちゃんにお茶を淹れてもらおうかなって思ってるんだけど〜」
「いいよ」
そう答えると、コノエと聖さんはキョトンとした表情で固まってしまった。

「あはは。ふたりともどうしたの? 変な顔しちゃって」
「……いいんですか? 会長」
なぜか怪訝そうな表情の聖さん。

「いや〜、私も会長にお茶汲みさせるのは正直どうかなって思ってたんだけどね。でも、当のミキちゃんが即答しちゃうから」
「構わないさ。みんなが美味しいって思ってくれてるなら嬉しいし」
まだまだ会長としては役立たずな分、少しでもみんなの役に立ちたい。

「ね、さくらちゃん。私に美味しい淹れ方を教えてくれないかな?」
控えめな声でお願いしてくる楓ちゃん。

「うん。いいよ。それくらいなら、いつでも喜んで」
「それなら、私も教えて貰おうかなぁ〜」
「じゃぁ一緒に……っ!?」
続くコノエの声に振り返った瞬間、どんっと柔らかい衝撃を背中に感じた。

「……ありがとっ、さくらちゃん!」
背中に視線を向けると、背中に抱きついている楓ちゃんの頭が見えた。

「あ、あの〜楓ちゃん? 今、ちょっと汗臭いから……」
身を離そうと移動するけど、楓ちゃんは俺のお腹に手を回してしがみついてくる。
振りほどこうと身体を左右にひねると、腰の上あたりに押しつけられている、むにむにとした感触がより強く意識を浸食する。

「そんなことないよ? ほら……いい匂い」
深呼吸するように、すぅ〜っと匂いを吸い込んでるっ!?

「嗅がないで! お願いだから」
耳たぶがカッと熱くなる。
背中の感触と精神的な羞恥が相乗効果になって、ものすごく恥ずかしい。

「楽しそう! 私も私も!」
今度は正面からコノエが迫ってきて抱きしめてくる。

なんだ、この人間サンドイッチ状態は!?
微妙に嬉しいと思ってしまう反面、それ以上に恥ずかしい。
でも、どうしてこんなにも気安いんだ。

「あ。ホントだ。ミキちゃん、いい匂〜い」
「だから嗅がないで〜〜!!」
もう堪忍してくれぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。



お湯が沸いたことで、サンドイッチ状態からなんとか解放された。
でも、紅茶を淹れる間はずっと、トマトみたいに赤くなった頬をからかわれた。

だって仕方ないじゃないか。
……楓ちゃんは知らないから仕方ないとして、コノエは俺の事情を知ってて抱きついてくるんだからなぁ。厳密な意味で女の子同士とも言えないんだから、もう少し節度を持って欲しい。

「はい。どうぞ」
「ありがとミキちゃん。いただきます」
コノエから順に、楓ちゃん、聖さんに紅茶を出していく。

「なにか手伝おうか?」
配り終えると、やることがなくなって手持ち無沙汰になる。

「ありがと。大丈夫だからミキちゃんはゆっくりしてて。今日の分は、もう一息で終わりそうだし、全体的に見ても、もうほとんど終わってるのよ」
紅茶の香りにうっとりしながら答えるコノエ。

「本当に?」
楓ちゃんとふたりで驚きの声を上げる。
特にコノエの分担は多方面で、簡単に終わりそうにもない量が残ってたと思うんだけど。

「大会プログラムのコピーも済んだし、今、マホちゃんが配布数をチェックしてるところ。明日には無事配布できそうよ」
「……終わりました」
聖さんの静かな声。
縦横交互に重ねられたプログラムは付箋が貼られていて、それぞれに『一年』『二年』『三年』『教職員』『当日一般配布』ときちんと区分けされている。

「そう、ありがとマホちゃん。私の方もメール送ったし、あとは出店の最終打ち合わせを残すのみよ〜。ミキちゃんの方も終わったんでしょ?」
「うん。明日のテントと会場設営くらいかな」
「あ、それはもう先生方に話を通してるから大丈夫だよ」
微笑む楓ちゃん。

「そっか。なんとか無事体育祭が行えそうだね。みんなありがとう」
「なんのなんの」
自慢げに胸を張りつつ謙遜するコノエ。
その仕草にみんなと一緒に笑いながら、ふと考える。

全体の作業量を把握し、適材適所に割り振りながら自分の分担をも滞りなくこなしていく。それは本来、生徒会長たる俺の仕事だ。今はコノエに代行してもらってるわけだけど、はたして俺に同じことができただろうか。

「大丈夫よ〜ミキちゃん」
そんな考えを見通したかのようなコノエの言葉にドキリとする。

「な、なにが?」
「私たち四人で『生徒会』なんだから」
とウインクする。
何度も言われてる『ひとりで背負い込むな』ってことか。

「そのことについて、ひとついいですか?」
おずおずと手を挙げる聖さん。
みんなが注目すると、緊張するのか、ほんのりと頬を染めつつ言葉を続ける。

「……確かに今は四人ですけど、最終的には執行部員を何人にするか考えてますか? 正直、この先も四人だけじゃ無理が出てくると思うんです。次のイベントまでには前もって人を増やしておきたいと思うのですが」
聖さんの質問に、俺とコノエは顔を見合わせる。
人数の問題は、この一週間、みんなオーバーワーク気味なことを考えても早急に対処したい事項だ。

「そうだね。私は倍の八人くらいかなと思ってるけど、みんなはどうかな?」
昨年は六人だったけど、何人かヘルプで入ってもらってたらしいし。

「異議な〜し」
「うん。私もそれでいいと思う」
手を挙げるコノエに同調するように、楓ちゃんも頷いてくれる。
コノエは俺と視線を合わせて一度頷くと話を続ける。

「まずは八人で様子を見て、足りなかったらスカウトしましょ。マホちゃんもそれでいい?」
コノエの言葉に聖さんは小さく頷いてから発言する。

「特に異論はありませんが、どうやって選びます? 誰でもいい。というわけでもないと思いますし」
「そぉねぇ〜。会長はどうお考えです?」
公式の場では俺を『会長』と呼ぶコノエだけど、それ以外では呼び方がコロコロと変化する。
そして『会長』と呼ぶときは、決まって敬語で話しかけてくる。
そういう時は、コノエが俺に『会長として振る舞って欲しい』と望んでいる時だ。

「最初に聖さんと楓ちゃんを誘ったように、また、それぞれがひとりずつ連れてくるのはどうかな?」
「…………」
予想に反して沈黙が帰ってきた。

「あ、あれ? だめかな?」
みんな考え込んだのを見て、俺は笑顔を張り付けたまま眉を下げる。
妥当な案だと思ったんだけど……。

「ううん。基本それで良いと思うのよ〜。ちょっとね、誰にしようか考えてただけで。他の人はどうかな」
聖さんと楓ちゃんが賛同の意思表示として頷く。
そっか、誰を誘うかを考えてたんだ。

「これは提案なんだけど〜、みんなが選んだ人を簡単にでいいから面接してみない?」
立ち上がって提案するコノエにみんなの視線が集まる。

「面接?」
相変わらず、なにを言い出すのか予想できないな。

「うん。正確には面接と言うより体験入会って感じかな。本当にやっていけるのかをお互いに確認するために。ね」
なるほど、と思っていると、聖さんが遠慮がちに手を挙げた。

「それは、どちらかの意向で生徒会に入らないこともあるってことですよね。……それなら普通に募集して選考してもいいんじゃないですか?」
そうか。聖さんが言いたいのは、誘って連れてきても必ず入ってもらえないのなら……ってことか。

「そうなんだけどね〜。……これは、私個人の考えなんだけど、しばらくは女の子だけでやっていきたいって思ってるの」
内緒話をするように声をひそめる。まるで打ち明け話でもしているみたいに。

「コノエは、男を入れたくない?」
どうしてだ? 確かに今は偶然に女子だけだけど。

「ひとつは話題作りのためかな。女の子だけの方が注目されやすいし、テレビ映えもいいだろうし。と言っても、ゆくゆくは男子生徒も入れていいんだけどね。ふたつ目は、ほら、今はみんな女の子じゃない? その中に男子生徒を入れる前に、しっかりとした体制を作っておきたいの。男の子がいると、どうしても頼ってしまうことが多くなると思うし、指揮系統をしっかりと固める時間が欲しいなって」
「とすると、上級生も好ましくないってことですか?」
聖さんの質問を聞いて『それもあるか』と思った。
今が一年生だけだから、女の子と言っても上級生が入ってくると同じ理由があてはまるのか。

にしても、
指揮系統、ね……。

「……つまり、私がもっと会長として、しっかりしないとダメってことだよね」
それは、重々わかっているんだけど。

「ふふ。ミキちゃんだけのことを言ってるんじゃないのよ? 私たち四人が組織として、しっかりまとまっていないとってこと。横槍や揺さ振りがあっても簡単に動じない程度にはね」
「指揮系統って言いましたけど、各々が勝手な判断で動いたら収集が付かなくなる。とかですか?」
聖さんの言葉にコノエは首を振る。
静かだと思ったら、いつのまにか楓ちゃんはノートに今の会話を記録しているみたいだ。

「ううん。各々の判断で動いてもらうことはあると思うの。今回のようにね。……うん、ちょうどいいタイミングだし、生徒会での決定権について決めておこうか」
「決定権というと、決議の時とかの?」
難しめの話になってきた。
まだ考えなくちゃいけないのならと、残ったバームクーヘンを紅茶で流し込む。

「うん。もっと広義で捉えていいよ。つまり生徒会の中で、なにかを決める時のルールってことね。まず、今の新メンバースカウトについて、これを例にして説明するね」
確かに組織として運用していくからには、これからもいろんなことを決めていく必要がある。

「誰かが……今回は私ね。『しばらく男子生徒を生徒会に入れない』という提案をするでしょ? そして、その理由についても話します」
さっきの話の流れだ。その話をどう結論づけるかってことだよな。

「私は提案者だからもちろん『賛成』の立場だけど、マホちゃんはどう思った?」
「私は……別に入れてもいいと思います。でも、積極的に入れたいわけでもありません」
「どちらでもいいってことね。カエちゃんはどう?」
「う〜ん、男子も入れないと、メンバーを集めきれないかもって思う」
「反対の立場ね」
「あ、反対ってほど、強くそう思ってるわけじゃないよ?」
「いいのよカエちゃん。ここで重要なのは、それぞれの立場での意見を出してもらうことなの。今みたいに反対意見も大歓迎。そして、会長はどう思われました?」
「そう……だね」
図らずも女の子ばかりになってるけど、これは狙ってのものじゃない。

生徒全体を取りまとめるから、女だけという偏りは良くないと思う。
個人的には男の役員もいた方がいい。
その方が精神的に楽だし、今のメンバーじゃ力仕事はきついだろう。
ただ、会長と副会長の双方が女子……俺も女として考えるとして、だけど……の組織で男は居づらいんじゃないだろうか?
特に俺やコノエは一年生だし、下級生に従うとなると二年生も敷居が高くなるのかも。
そんなことを考えつつ視線を上げると、みんなが注目していた。

「うん。私は暫定的賛成、かな。そうだね。まずは七月まで、コノエの意向を汲んで女の子だけでやってみようか。もちろん人数は早急に増やす方向で。さっき言ったように、ひとりがひとりをスカウトして当たってみていいんじゃないかな。面接というか体験入会も良いアイデアだと思う。一緒にやっていけるかお互いに知る必要もあるからね。それで新しく何人か入ったとして、夏休み前にもう一度話し合おうよ。その時点で人数的に十分ならそれでいいと思うし、足りなければ更にメンバーを増やさないといけない。その時は男子生徒も受け入れる方向で検討するのはどうだろう」
話し終わると、パチパチとコノエが拍手する。

「いいよ〜ミキちゃん。さすがね。え〜と、ちょっと話を戻すけど、今みたいにみんなの意見を出し合って、最後に会長が決めたことを生徒会の決定事項にしたいんだけど、どうかな?」
「え?」
俺が言ったことが決定事項?

「つまり、判断はすべて会長が行う。と理解していいんですか?」
念を押すように聖さんが確認する。

「そうなんだけど、要は私たちの意見を聞いてもらった上で決定してもらうってことね」
コノエの説明に頷く聖さん。
……え? まさか納得したの!?

「ちょっと待ってよ。それは危険じゃない? お……私が判断を誤ったらどうするのさ」
「だから、みんなの意見を聞いてから判断してもらうの。今の答えからして、ミキちゃんは独善的な方向に走らないと確信できたしね」
コノエは自信ありげにウインクする。

いやいや、いやいやいや。コノエに自信があってもだな。

「私は、櫻子ちゃんの考えに賛成」
「私も構わないと思います」
さっそく意思表示として手を挙げる楓ちゃんと聖さん。

「どうですか、会長?」
コノエの笑顔に渋面で返す。いいのか、本当にそれで。

「会長は不服そうですね」
聖さんはやや苦笑いだ。
このまま話が進むと、矛盾する可能性に思い当たっているんだろう。

「不服と言うか、そんな横暴ができる仕組みっていうのは、やっぱり気になるよ」
例えば今『それは嫌だ』って言えば、強制的に否決できるってことじゃないのか。
でも、否決する事柄が否決そのものの強制力を発するものだから……あ〜意味がこんがらがるっ。

「それなら、アンチテーゼも決めておきましょうか」
「アンチテーゼ? ……対照とか正反対の意味だっけ」
「ミキちゃんが心配しているのは、私たち三人が賛成しているのに、自分が反対なら押し切って決めていいのかってことでしょ? 今みたいに」
「……まぁそんな感じ、かな」
「ふふ。そんな心配をするからこそ、私は問題ないと思ってるんだけど。ミキちゃんがそこまで言うなら……そうね、会長の決定に不服がある場合、私たち三人が望めば、納得するまで話し合いの場を設けることができる。これでどうかな?」
つまり、みんなの反対を押し切っては決定できないってことか。

「それで話し合っても納得できずに意見がまとまらなければどうするんです?」
聖さんの言うことも起こりうるだろう。
どちらかが折れればいいんだけど、双方折れなかった場合は。

「その時は多数決で決めましょ。会長が二票、私たちが一票ずつ持てば奇数になるから決着がつくし」
「……つまり会長の決定を覆すことができるんですね」

最近気づいたんだけど、聖さんは要所要所で確認するように念を押してくれる。話の流れを明確にしてくれるので、聖さんが話に加わっていると認識のすれ違いは起こらないだろう。

「私たちみんなが反対すれば、ね。ミキちゃんはこれでいい?」
それなら、独断専行を防ぐことができる、か。

「うん、それでいいよ。なんにしても、絶対権力みたいなものを防ぐ仕組みは必要だと思うから」
間違いは正されるべきだからね。
意見が割れて、みんなが反対なら俺の方が折れるべきだ。

「まぁ、実際は多数決にはならないと思うんだけどね」
やけに自信ありげにコノエが呟いた。

「う〜ん、それがあっても権限が大きすぎる気がするけど」
「あら、当然よ。権限の全ては会長に集約するんだから。みんなも、それでいいよね」
見守っているふたりに問うと、頷いて賛成の意志を返してくる。

「……わかった。でも、私が間違ってると思ったら遠慮なく言ってほしい」
「もちろんよミキちゃん。さっきも言ったけど、私たち四人で生徒会なんだから」
みたびウインクするコノエ。

「私たちは全力で協力するから、さくらちゃんのやりたいようにやって」
にっこりと微笑む楓ちゃん。

「私も今の結論に異論ありません」
落ち着いた物腰で聖さんは薄く微笑む。

そうか。うん、それなら。
どっちにしろ生徒会の代表として責任を取る立場なんだ。
その分の権限があるということに納得しよう。

 
   




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